服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。

ジーンズ・ファッションの流行に派生した機能的なスタイル

年代別『流行ファッション』物語:ジーンズ・ファッションの流行に派生した機能的なスタイル

「アーミー・ルック」1973~1977

軍隊の放出品(サープラス)を逆説的な意味で反戦思想のファッションとしたのは、1960年代のヒッピーたちにまで遡るが、1973(昭和48)年頃から日本でもこうした軍服を着る若者たちが目立つようになった。しかし、それは反戦思想から生まれたものではなく、ジーンズ・ファッションの流行に派生した機能的で実用的な味わいを、中古軍服の中に見い出したからに他ならない。米軍基地近くのサープラス・ショップなどから流れ出たアーミーウエアの数々は、やがてジーンズ・ショップなどにも並ぶようになり、「アーミー・ルック」というファッションを作り出す。とくに人気のあったのは米軍でフィールド・パーカと呼ばれるアーミー・ジャケット。これのフードを取り外し、ワッペンをぺたぺた貼り付けたカーキ色のジャケットがカメラマンたちから広がった。ボトムはブルージーンズを合わせるというのもこのころの流行スタイルで、アーミー・バッグやアーミー・ベルトといった小物類も必須のアクセサリーとなっていた。