服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。

男の新しいスーツ・スタイルのトップスとして注目

年代別『流行ファッション』物語:男の新しいスーツ・スタイルのトップスとして注目

「サファリ・ルック」1971~1973

アフリカでの動物狩猟旅行を現地語でサファリといい、この時用いるシャツ型のジャケットをサファリ・ジャケットと呼ぶ。これを女性のモードとして紹介したのは1967年春夏パリ・コレクションでのサンローランやマルク・ボアンたちだったが、1970年代に入ってこうしたジャケットにスカートやパンツを合わせる「サファリ・ルック」が一般化するようになった。多くは丈夫なコットン地や麻などで作られたが、中にはデザインだけをサファリ風にして、さまざまな素材を用いるモディファイド・サファリも多く見られた。しかし、特筆すべきはこれが男の新しいスーツ・スタイルのトップスとして注目を浴びたことである。1969年、アメリカで「ノンスーツ(スーツでないスーツの意)」というニュースーツの動きがあらわれ、サファリ・ジャケットはそれに最もふさわしいアイテムと目されるようになったのだ。これに共地のパンツを組み合わせた一式がサファリ・スーツとなる。