服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。
『メイドインUSA』の発行でその流行は決定的なものとなった
「ヘビーデューティー&ワーク・ファッション」1974~1977
きわめて実用的で機能性の高い道具類が、「ヘビーデューティー」の名の下に若者たちの人気を集めるようになったのは1974年頃からのことだった。1969年にアメリカで創刊された『ホール・アース・カタログ』で、すでにそうした下地はあったのだが、これをヒントにして日本で作られた『メイドインUSA』の発行(昭和50)で、ヘビーデューティー・ファッションの流行は決定的なものとなる。質実剛健を旨とするウエアや靴、バッグなどがニューライフスタイルのかけ声とともに若者たちの必需品とされるようになったのだ。ダウンベストやマウンテン・パーカ、ネルシャツなどがその代表とされるが、これに伴って丈夫さが取り柄のワークウエア(作業着)も注目されるようになった。とりわけロックバンド「ダウンタウン・ブギウギ・バンド」のステージ衣装として着用されたカバーオールズ(つなぎ服)は、ワーク・ファッションの火付け役となった記念すべきアイテムだ。