服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。
華やかな衣装とメイクを特徴とするロック・ファッション
「グラム・ルック」1970~1973
1970年代に入って間もなく、イギリスにグラム・ロックと総称されるロック音楽が誕生する。グラムとはグラマラス(魅惑的な)から生まれたもので、華やかな衣装とメイクを特徴とするロック音楽であるところからそう呼ばれるようになったのだ。Tレックスのマーク・ボランやロキシー・ミュージックのブライアン・フェリー、またデヴィッド・ボウイやアリス・クーパーといったところがグラム・ロックのスターたちで、彼らはたちまち時代の寵児となった。こうしたグラム・ロックに共感する若者たちのファッションが「グラム・ルック」で、それはまるでステージ衣装のようなきらびやかな雰囲気に彩られていた。その前のロック音楽の流行は「ハード・ロック」と呼ばれる激しいサウンドを特徴としたもので、服装もジーンズにTシャツといったシンプルなものが中心だった。それがグラム・ロックによって一変したものだから、世間は驚いたのである。