「取るに足らぬこと、些細なこと」を英語でトリビア trivia といい、当時のテレビ番組『トリビアの泉』以来、大変な雑学、蘊蓄ブームを巻き起こすようになっているが、ファッションの世界にはこれに類するトリビアがことのほか多く見受けられる。たとえば「腹巻き」は16世紀のヨーロッパで生まれ、日本では明治時代にキモノから洋服に変化したときに帯の代わりに用いられたという。またトートバッグはもともとキャンプ地で水を運ぶために使われていた、というのもこれを知らない人にとっては「目からウロコ」の話となるだろう。ファッションに関するトリビアは語源や発生にまつわる話が多いけれど、それを知っているとつい誰かに自慢したくなるものだ。それこそトリビアのトリビアたるゆえんなのだが、あの女性ファッション誌『JJ』のタイトルが「女性自身」のアルファベット綴りの略からきているって知っていました?

ズロースを初めてはいたのは日本赤十字社の看護婦だった

ファッション・トリビア蘊蓄学:ズロースを初めてはいたのは日本赤十字社の看護婦だった

日本女性が下着のパンツをはくようになったのは、1932(昭和7)年12月の「白木屋百貨店」の火事以降のこととされ、これが日本女性下着事始めのように拡大解釈されているが、そんなバカなことはない。そのはるか以前、1887(明治20)年にすでに下着のパンツは用いられているのだ。当時、女性の下着パンツは「ズロース」と呼ばれていたが、これは英語のドロワーズの訛り。現在のTバックやビキニショーツなどには及びもつかないクラシックな形のものだが、ともかくこれを日本赤十字社が看護婦の制服導入時に採用してはかせたのである。もっとも、これは公式にわかっていることであって、それ以前にズロースを使用していた日本女性はいたはずだ。たとえば日本で最初に洋服を着た女性は、幕末の居留地に住む「ラシャメン」(西洋人の妻)と呼ばれた女たちとされ、彼女たちはおそらく下着のパンツを着用していたと思われるのである。