服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。

女子大生を中心にフィラ、エレッセなどのテニスウエアが人気に

年代別『流行ファッション』物語:女子大生を中心にフィラ、エレッセなどのテニスウエアが人気に

「スポーツ・ファッション」1980年代

スポーツのファッション化というきわめて現代的な現象。それはすでにジョギングやスケートボードなど1970年代の終わりごろから始まっていたけれど、一気に花開いたのは1980年代になってからである。その原動力となったのは、なんといってもフィットネスのブームだった。体の形を整えるというシェイプアップの考え方は、心と体の調和を図るフィジカル・フィットネスに結びつき、エアロビクス(有酸素運動)が人々の関心を集めてゆく。それに伴うレオタードやレッグウォーマーなどがカラフルな調子にデザインされ、さらにリーボックの「フリースタイル」と呼ばれるフィットネス・シューズがブームに輪をかけた。これとともに注目を集めたのが女子大生たちのテニスウエア・ルック。フィラ、エレッセといったこれまでのテニス・ポロとはまったく異なる感覚のテニスウエアが人気となり、こうしたものを街中で着るスポーツ・ファッションが日常化したのである。