男子專科 2014 AUTUMN vol.2 より

男子專科 2014 AUTUMN vol.2

サヴィル・ロウに妖精の粉をふりかけたスウィンギン60’Sのピーターパン(3)

ロンドンのシックスティーズ

いっぽう1961年頃、コンデュイ・ストリート29番地に店を構えるアンソニー・シンクレアは、映画『ドクター・ノオ(邦題は007は殺しの番号)』のためのジェームス・ボンド用スーツを仕立てることになる。上質なライトウエイトウールのシングル胸2個ボタン、ノーベントの上着に、ベルトレスのトラウザース。海島綿の白いドレスシャツはカフリンクスを使用しなくてもダブルカフスになる独特な形状で、ネクタイは常に黒いシルクニット。ストイックなまでに同じスーツスタイルでキメるという手法は、アンダーステートメントなモダン・ダンディという新しい男性像を世間に送り出すきっかけとなった。

また著名な写真家で映画衣裳なども担当したセシル・ビートンが、当時ブームになりつつあったフレンチラインの高級既製服に対抗するかのように、ハンツマンにハイウエストのカラーレスジャケットとカマーバンド付きのトラウザースを仕立てさせたことも加えておきたい。彼は、サヴィル・ロウのクラフツマンシップは新しいデザインもこなせる、ということを世間にアピールしたのである。セシル・ビートンはアート界を代表するダンディであった。

・・・次回更新に続く