昨日と今日の男の博物誌:サム・シェパード 男子專科 1986年2月号 NO.263

男子專科 1986年2月号 NO.263 より

サム・シェパード(アメリカ:劇作家・俳優:1943~)-8

天才?不満足が少し深いだけさ。

1964年にオフ・オフ・ブロードウエイのシアター・ジェネシスで『カウボーイズ』が上演されたわずか1年後。サム・シェパードの名前と才気のほどは、もうニューヨークの演劇アーチストたちの間に知れ渡っていました。

その頃、ニューヨーク・タイムズ紙がつけた「OOB(オフ・オフ・ブロードウエイ)演劇界の天才」という見出しがサムの存在の鮮烈さを物語っています。

21歳での劇作家デビュー以来、サム・シェパードが書きつづけたドラマ作品は40本を超えているというから凄いものです。そのうち優れたオフ・ブロードウエイ作品にヴィレッジ・ボイス紙から贈られるオビー賞を受けたものが7本。1979年の作品『ベリード・チャイルド』はオビー賞とともにピュリッツァー賞も受けている。「明日の世代はアメリカの苦い人生について知るだろうが、その半分はサム・シェパードの仕事からだろう」と「タイム」マガジンは書いています。

前の妻と別れ、『カントリー』で共演したジェシカ・ラングと住むその愛情生活の頑強さと疲れを知らない創作生活のしたたかさ。「激しい不満足によってぼくは駆りたてられるんだよ」と42歳のサム・シェパードは語っています。20年前と変わらないこの渇望感の深さがその顔に不思議な弾性を与えているのは確かなようです。

・・・了