「取るに足らぬこと、些細なこと」を英語でトリビア trivia といい、当時のテレビ番組『トリビアの泉』以来、大変な雑学、蘊蓄ブームを巻き起こすようになっているが、ファッションの世界にはこれに類するトリビアがことのほか多く見受けられる。たとえば「腹巻き」は16世紀のヨーロッパで生まれ、日本では明治時代にキモノから洋服に変化したときに帯の代わりに用いられたという。またトートバッグはもともとキャンプ地で水を運ぶために使われていた、というのもこれを知らない人にとっては「目からウロコ」の話となるだろう。ファッションに関するトリビアは語源や発生にまつわる話が多いけれど、それを知っているとつい誰かに自慢したくなるものだ。それこそトリビアのトリビアたるゆえんなのだが、あの女性ファッション誌『JJ』のタイトルが「女性自身」のアルファベット綴りの略からきているって知っていました?

昔、ベストは超ロングだった

ファッション・トリビア蘊蓄学:昔、ベストは超ロングだった

スーツの中に着るベストといえば、体にぴったりした丈の短いものというのが常識だ。が、うんと昔のベストは丈が膝まであるような超長いものだった。ベストという名の衣服を初めて着たのは英国王チャールズ2世(在位1660~85)。王は1666年10月7日、衣服改革宣言を行う。すなわち「余は本日より新しい衣装に改めることにする。この衣装は変えることはない」と公けに宣言したのだ。ここに上着(コート)+ベスト+半ズボン(ブリーチズ)という、現在の男のスーツ・スタイルにつながる原型が誕生したのである。もっとも、ベストといっても「体の線に合った司祭服のような丈の長いコート」と日記作家として知られるサミュエル・ピープスが書いているように、それはとてつもなく丈が長く、しかも袖付きのものであった。その後これは英国ではウエストコートと呼ばれ、丈も徐々に短くなってゆく。現在、燕尾服の着装において、白いベストの裾を上着よりも長くのぞかせることがあるのは、こうしたことの名残りなのだ。