服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。

まずはドレスシャツのカラー化から始まった

年代別『流行ファッション』物語:まずはドレスシャツのカラー化から始まった

「ピーコック革命」1967~1968

「男も雄孔雀のようにもっとカラフルに装おうじゃないか」。こんな提案がアメリカの化学繊維総合メーカー、デュポン社からなされたのが1967年秋のこと。同社研究所のディヒター博士は、これをピーコック・リボリューションと称したが、日本では「孔雀革命」とか「ピーコック革命」として紹介された。そして、それはまずドレスシャツのカラー化から始まった。まさしくワイシャツ(ホワイトシャツの日本語)でしかなかったそれまでのドレスシャツが一挙にカラフルになり、真っ赤や緑色のドレスシャツまでが職場に堂々と登場したものだ。これに合わせて派手な柄のワイド・ネクタイも現われ、ビジネスマンのVゾーンは驚くほどファッション化したが、スーツまでがカラフル化するまでには至らなかった。「どぶねずみルック」と揶揄されたビジネススーツを、明るい色に変えることが目的であったはずの「ピーコック革命」も、そこまでのパワーは発揮できなかった。