服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。
映画『さらば青春の光』に見るモッズとロッカーズの対決
海外の1960年代ファッション・トピックス:「モッズvs.ロッカーズ」1962~1964
イギリスにモッズと呼ばれる若者集団が登場したのは1958年頃のこととされる。モッズというのはモダニストの略とされ、彼らはモダンジャズ好みのイギリス版ビート族の一種であったという。それがスリムなスーツやモッズ・コートと呼ばれるミリタリー調のコートに身を固め、ベスパに乗って集団行動をとるようになるのが1962年ごろからのこと。そして、これに対抗する形でロッカーズと呼ばれるもうひとつの若者集団が登場する。モッズのスクーターに対してこちらは大型のオートバイ。服装も鋲を打った革ジャンにジーンズ、ブーツといった硬派イメージで、激しいロック・ミュージックを好んだ。こうしたモッズとロッカーズの対決は1964年に最盛期を迎え、やがてロッカーズの面々はモッズに吸収されていった。このへんの事情は映画『さらば青春の光』などに詳しいが、あのモッズ・ファッション流行の裏には、こんな歴史があったのだ。