服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。

『華麗なるギャツビー』で

年代別『流行ファッション』物語:『華麗なるギャツビー』で

「レトロ・ファッション」1973

ファッションにクラシック回帰の傾向が見えてきたのは1973年ころからのこと。ジーンズ・ルック全盛の中で、それとはまったく性格を異とするエレガントなスタイルが台頭してきたのだ。男たちはそれまで見向きもしなかったクラシカルなスリーピーススーツやダブルブレステットのスーツに興味を示し、女性たちは1930年代調のロングスカートを好んではき始めた。これをレトロスペクティブ(回顧の、懐旧の)を略して「レトロ・ファッション」と呼ぶようになった。こうした動きは実は1968年頃、映画『俺たちに明日はない』から生まれた″サーティーズ・ルック(1930年代ルック)″によって示されてはいたのだが、本格的になるにはこのころまで待たなければいけなかったのだ。そして、これもまた映画の影響が大きいことを指摘しておかなければならない。72年の『ゴッドファーザー』『バラキ』、そしてレトロ・モードを決定づけたのが74年の『華麗なるギャツビー』であった。