ストッキングは、最初男性用だった
「取るに足らぬこと、些細なこと」を英語でトリビア trivia といい、当時のテレビ番組『トリビアの泉』以来、大変な雑学、蘊蓄ブームを巻き起こすようになっているが、ファッションの世界にはこれに類するトリビアがことのほか多く見受けられる。たとえば「腹巻き」は16世紀のヨーロッパで生まれ、日本では明治時代にキモノから洋服に変化したときに帯の代わりに用いられたという。またトートバッグはもともとキャンプ地で水を運ぶために使われていた、というのもこれを知らない人にとっては「目からウロコ」の話となるだろう。ファッションに関するトリビアは語源や発生にまつわる話が多いけれど、それを知っているとつい誰かに自慢したくなるものだ。それこそトリビアのトリビアたるゆえんなのだが、あの女性ファッション誌『JJ』のタイトルが「女性自身」のアルファベット綴りの略からきているって知っていました?
現在ストッキング、とりわけパンティストッキングというと女性専用のものと決まっているが、その最初はもっぱら男性が用いるものだった。英国における男性の下体衣は、15世紀に至るまでホーズと呼ばれるズボン状のものだった。フランスではブレーとショースという。これが16世紀に入るころに腰部と脚部に分かれ、脚部のほうをストッキング・オブ・ホーズと呼んだのが「ストッキング」という名の起こり。これはストック(木の幹)を語源とするもので、つまり脚全体をおおう長いものという意味からきている。最初はホーズと同じ布製であったが、16世紀に編物の技術が伝わると伸縮性のよいニットのストッキングが支配的となり、とくに絹製のそれが貴族たちの脚をおおうようになるのである。こうしたスタイルはフランス革命(1789年)ごろまで続くことになるが、このころまで男性の魅力の見せ所はストッキングに包まれた脚線美にあったのだ。