「取るに足らぬこと、些細なこと」を英語でトリビア trivia といい、当時のテレビ番組『トリビアの泉』以来、大変な雑学、蘊蓄ブームを巻き起こすようになっているが、ファッションの世界にはこれに類するトリビアがことのほか多く見受けられる。たとえば「腹巻き」は16世紀のヨーロッパで生まれ、日本では明治時代にキモノから洋服に変化したときに帯の代わりに用いられたという。またトートバッグはもともとキャンプ地で水を運ぶために使われていた、というのもこれを知らない人にとっては「目からウロコ」の話となるだろう。ファッションに関するトリビアは語源や発生にまつわる話が多いけれど、それを知っているとつい誰かに自慢したくなるものだ。それこそトリビアのトリビアたるゆえんなのだが、あの女性ファッション誌『JJ』のタイトルが「女性自身」のアルファベット綴りの略からきているって知っていました?
男のダークスーツはボウ・ブランメルから始まった
一般の人でボウ・ブランメルという名前を知っていたら、相当のファッション通といえるだろう。ボウ・ブランメルというのは19世紀初頭の英国に実在し、「キング・オブ・ダンディー」の異名をとった世紀の洒落者なのである。シンプリシティー(簡素美)を絶対的な価値観としてダンディズムの道を貫いたブランメルの言葉に「身だしなみが完璧であるためには俗眼の注目を惹いてはならぬ」というのがあるが、ことほどさようにブランメルは目立つことと「これみよがし」なオシャレを嫌った。着るものは黒、濃紺、暗緑色、焦げ茶といったダークトーンの上着に淡黄色のベスト、白のパンタロンといったきわめてシンプルな組み合わせ。ブルボン王朝時代の貴族たちの華麗な衣装とはまったく正反対ともいえる質素な服装革命を彼は無言のうちに成し遂げたのである。こうしたブランメルの考え方が元になって、男はダークスーツという近代メンズウエアのルールが確立されていったのだ。