服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。

神戸発・大人っぽくエレガントな雰囲気のお嬢様ファッション

年代別『流行ファッション』物語:神戸発・大人っぽくエレガントな雰囲気のお嬢様ファッション

「ニュートラ」1974~1978

2004年現在もなお復活の気配を見せている「ニュートラ」だが、これこそ純国産ファッションの走りであろう。ニュートラというのはニュートラディショナルを元にして作られた言葉で、もともとはメンズファッションの世界でニュートラッドとして用いられていたもの。これを神戸の元町あたりに見るお嬢様のちょっとお金のかかった上品なカジュアル・スタイルとしたのは、女性ファッション誌の仕業であった。よく「ニュートラ」は1975年に創刊された『JJ』誌が創ったものという紹介がされるが、それは違う。すでに1974年ごろから『アンアン』が神戸発のお嬢様ファッションとして採り上げており、『JJ』はそれを踏襲したに過ぎないのだ。ようやく知られるようになった世界の一流ブランド品を身につけ、清潔感あふれる格好で街を行くOLや女子大生たち。それはこれまでのカジュアルとはひと味ちがう大人っぽくエレガントな雰囲気に満ちていた。