ファッションについては大概のことは知っているつもりだが、それでもどうしてもわからないことは多い。たとえば「リゾート着はなぜ派手なプリント柄が多いの?」と問われても、リゾートウエアってそんなものでしょ、とか、そうじゃない大人しい無地のリゾート着ってのも結構あるよ、などと答えるしかないのだ。ま、これもファッション・トリビアに関するようなもので、知っておいて損にはならないが、知らなくてもどうでもよいことが多い。ただしフォーマルウエアについての知識、こればかりは知っておいてけっして損にはならない。というよりも知らないと恥をかくことにもなりかねないのだ。何をどう着ようがかまわない自由な着こなしが横行する現代の世の中だが、フォーマルウエアの世界だけはそういうわけにはいかない。
ブレザーの語源は?
「背広」の語源と並んで、「ブレザー」のそれにも諸説ある。いちばん有名なのは1877年ごろに行われた英国ケンブリッジ大学とオクスフォード大学の対抗ボートレースから生まれたというもの。この時、ケンブリッジ大学のボート部員が真紅のジャケット(赤白ストライプの説もあり)をユニホームとして着用し、試合に臨んだ。その姿が川面に映ってゆらゆらと揺らめいている様子を見た観客の中から、期せずして「オオー、ブレイザー!」(おお、炎のようだ)という喚声が起こり、これが「ブレザー」の語源になったというわけである。もうひとつは英国海軍の軍艦ブレイザー号(英国商船の説もある)の乗組員たちの服装があまりにだらしなかったために濃紺サージで作ったダブル・ブレステット型のジャケットを与え、これが現在のダブルのブレザーにつながったといわれている。いずれにしてもブレザーの元の語が「ブレイザー blazer」(炎の意)であることは間違いない。